移住イベントレポ
地域住民がアテンドにバスガイド!宮崎地区を巡る空き家ツアーレポート
おかざきの里山移住促進として、2024年3月9日、「地域に聞く!いったーん空き家ツアー。“宮崎地区編”」を開催しました。宮崎地区の方から「小学校や保育園の存続危機をどうにかしたい」とのお話しを受け、地域住民さんご協力の元、空き家ツアーを企画開催しました。当日は空き家内覧バスツアーと、地域住民さんと移住希望者が交流できるお茶会を実施。どんな内容だったか、当日の様子をレポートします。
地域の声から企画された、移住促進への一歩
移住窓口『もりまっち』を運営しながら、空き家情報が1軒も入ってこなかった宮崎地区。その背景には、親族が戻ってくるかもしれないという期待で家を手放せなかったり、片付けたくても重い腰が上がらない、またご近所トラブルになりかねない新しい移住者に対する不安、など、様々な要因があります。しかしながら実情、空き家はたくさんあり、また子供も年々減少している中「あと何人減ったら閉校」が視野に入ってきた状況に危機感を抱く地域住民の方々が集まり、もりまちにご相談にお越しくださったことが今回の企画に繋がりました。実際に宮崎地区には宮崎小学校がありますが、2010年に大雨河小学校、千万町小学校を併合し、2校の閉校を経験している地区。「子供の声は地域の活気に直結する」と話す地域住民さんの言葉には重みがあり、不安はあれど行動しなければ状況は変わらないとの思いで行動されていると言います。実は里山地域の未来に危機感を持ち移住促進活動をされている方は何人もいらっしゃり、岡崎市としても2年前から、オクオカ(岡崎の里山12学区)エリアに移住アドバイザーを各学区に配置し、地域と連携しながら移住政策に取り組み始めています。今回の空き家ツアー企画では宮崎地区の移住アドバイザーさんとも連携し、内覧してもいいよという空き家を地域の力で探してくださり、『空き家いったーん(※)ツアー』の実施に繋がりました。
ツアーに参加された方のきっかけは様々で、オクオカ移住相談窓口「もりまっち」にご相談に来られた方はもちろん、岡崎でこんな活動してるんだとInstagramで知って興味が湧いた、岡崎市公式LINEの発信を見て申し込んだという方もいらっしゃいました。補助席も使って満員御礼、マイクロバスに乗り込み、ツアーがスタートしました。宮崎地区で生まれ育った住民清水さんにも一緒に乗車していただき、地域の暮らしや移住状況、地域の施設などガイドをしていただきながら、一軒目の空き家へ向かいます。
石原町住民の鈴木さん(写真:中央)と、石原町へ移住した神谷さん(写真:左)
最初の空き家紹介は石原町にて。石原町はくらがり渓谷があり、素敵な飲食店も集まる活気のある町です。石原町在住の鈴木さんより地域の良さや空き家の説明と、現実的な町内会費などの面もお話しもしてくださいました。またちょうど通りかかった移住3年目の神谷さんのお話しでは開口一番に「移住してきて困ったことは何もない」「とても住みやすいし、ご近所さんも仲良くしてくださっているし、充実している」と笑って話す姿が印象的でした。
雨山町住民の清水さん(写真:右)と、バスガイドを担当いただいた清水さん(写真:中央)
2軒目の空き家ご紹介は雨山町。雨山町は一番奥に穏やかな雨山ダムがあり、サイクリングコースとして、また最近では「雨山歩きマップ」が地域で作成され、歴史跡を辿りながらハイキングをされる方も増えています。ここでは雨山町在住の清水さんが参加者さまをお出迎えしてくださいました。田畑も所有する空き家はもちろん、日当たりの良さに魅力を感じる方も多くおられました。
3軒目の空き家は東河原町。山道を抜けると現れる山間の集落で、味わい深さを感じる住宅が多く並んでいます。地域住民山本さんのご説明では、こちらの空き家は築100年以上。茅葺にトタンを乗せた昔ながらの屋根で、梁は太く、釜戸があった形跡が残ります。「間もなく壊そうかと思っているが、もしここをDIYして集いの場にしたり、住みたいという方がいれば」とご紹介くださいました。
千万町楽校にて、地域説明をしてくださる千万町町在住の荻野さん(写真:中央)
4軒目に行く前に、地域の集いの場となっている千万町楽校にてランチです。お弁当が届くまでの間、千万町町(ぜまんじょちょう)の地域の説明をしてくださった荻野さん。千万町は少し山を登った位置にあるため、気温が宮崎地区の中でも低いのだそう。原風景が残り、時の流れがゆったりと感じられるのどかなエリアです。3月になるとミツマタがきれいに咲く群生地があったり、千万町楽校でも定期的にイベントが開かれています。
ランチは、千万町町にお店を構える『ネパール喫茶 茶流香』さんに特別にお弁当を作っていただきました。温かいチャイと共にスパイシーなお料理を、参加者さまと地域の方4名も加わりお話ししながら美味しくいただきました。茶流香さんは不定期での営業ですが、お店のカレーは4年間ネパールで暮らされていた本場の味で絶品。タイミングが合えば是非お店でご賞味ください。
空き家4軒目はそのまま千万町町にて。かなり大きな貸し物件で、日本家屋ならではの構造・間取りに参加者さまからの質問が積極的に飛び交います。千万町の環境に興味を持たれる方も多く、ここは地域独自で空き家対策を意欲的に行っている地域で、新たな移住者も少しずつ増えているようです。
実際に移住された方々の声は「いったーん」サイトにて掲載されております。是非あわせてご覧ください◎
思いは「地域に関わってくださる方に来てほしい」
石原町にある一棟貸し宿『のぞみの家』
空き家ツアー最終地点は、築70年の古民家を大規模リノベーションして完成した一棟貸し宿『のぞみの家』でのお茶会です。建物を見学いただいて移住の夢を膨らませていただきながら、宮崎で創業200年以上続く老舗茶園『宮ザキ園』さんの釜炒り茶をお召し上がりいただきながら、一番の目的は地域と移住希望者が互いに知り合っていただくことにあります。「誰でもいいワケではない。でも地域に関わってくださる方にはすごく来てほしい」これが里山住民の本音です。人口が少ない分、地域のお役は早く回ってきますし、無住寺院を自分達で掃除当番を回していたり、総会や消防団もあったり。草刈りは当然の作業です。田舎は役回りが市街地に比べてとても多く、ご近所との関わり合いも深いです。その深さを普通だと感じる、或いは求めている方は、もしかしたら地域の方からアテンドしてくれるかもしれないといっても過言ではない位、お世話好きな方が多いのも里山のいい所です。
このお茶会では町ごとで席を分けて、興味のある地域の方とお話しいただく時間を設け、ざっくばらんにお喋りしていただきました。実際に移住希望者の方は暮らし方の相談をしたり、実際に移住者はいるのかなどを聞き、地域の方はどういう方に来てほしいのかを伝えたり、地域PRをしたり、排水はどのように対応しているかなど現実的なお話しもしてくださっておりました。
あること探しで楽しく移住し定住する
改めて暮らし方は十人十色で無限の可能性があることを感じました。お互いに「こんなはずじゃなかった」とならないよう、移住を検討する際に確認いただくとよいことが見えてきました。
① まず今の暮らしを振り返り、移住に何を求めているかを洗い出すこと。
② 地域や土地の気候・ライフライン・交通手段・周辺施設・地域のお役・町内会費など、情報をできるだけ集めていただくこと。
③ 実際に何度も足を運んでいただき、理想と合っているか、働き方と理想の暮らし方が両立するかなどを事前に体感していただくこと。
④ できるだけ事前に地域と交流を深めていくこと。
「郷に入っては郷に従え」ということわざはちょっと言葉が強いかもしれませんが、要するに「郷に敬意を持って関わらせていただく」という心構えが、のちに安心して楽しく自分達の暮らしを築くことに繋がるのではないかと感じます。移住窓口に相談に来られ、今実際に宮崎地区に移住されてきた方は、地域に通い続けたことで知り合いが増え、地域の方からの紹介が繋がって賃貸成約に結び付いたそうです。成功事例からもわかるように、決め手となるのは「人とのご縁」だということが大いにあるということです。
新型コロナウイルスがもたらした被害は大きいものでしたが、予期せぬ恩恵としてテレワーク・在宅勤務・ワーケーションなど新しい働き方が一気に浸透し、田舎へ移住する動きが加速したのはまさに追い風です。そして更に移住だけでなく定住することで、人・暮らし・環境の未来に繋がっていきます。里山では、今までの暮らしにあったことが“ない”、ではなく「“ある”こと探し」を掘り下げていくことが、豊かな移住暮らしの実現へのカギなのかもしれません。
見渡せば山々に囲まれ、空気はおいしく、どこにいっても水の音が聞こえる宮崎地区。地域の方とお話ししたり、畑を教えてもらったり、草刈りをしたり、楽しく優しく人と交流し助け合いながら暮らしたい方には是非オススメしたい移住先です。
(※)【いったーんプロジェクトとは?】
・移住・定住者促進プロジェクトの別称で、田んぼの広さを示す「一反」、都心や地元から別の地方に移住することを示すことを表す「Iターン」、しばらくの間や一時という意味を表す「一旦」、そして研修の意味を表す「インターンシップ」の意味をかけあわせた造語。
・「いったん」○○してみる。というように少し肩の力を抜いて移住について考えてもらったり、まずはまちから森へのインターンのような体験からはじめてみようかな。と、軽い一歩を踏み出してもらいやすいプロジェクトにしたいという思いを込めてプロジェクト名とした。
https://itturn.jp/